村上龍の『限りなく透明に近いブルー』が面白くなかったから感想を書く

『限りなく透明に近いブルー』を最後まで読んだけど、まったく面白くなかった。
登場人物がどいつもこいつもセックスかドラッグかアルコールしかやってない。
その描写にずっと不快感があって、読むのをやめようかと何度も思った。

でも、この作品は芥川賞史上でいちばん売れている本らしい。
全部読んだらきっと面白いと思うはずだと思って、頑張って最後まで読んだ。
それでもやっぱり面白くなかった。

読んでから数日が経っても、不快感がずっと続いているのに気がついて、「あれ、もしかしてこれがこの作品の持ち味なんじゃないか?」と思うようになった。
体に毒が染み込むように、読む前と読んだ後で、なんとなく自分が変わってしまったかのような気持ちになった。

面白くはないけど、嫌でも忘れられなくなる作品。
『限りなく透明に近いブルー』は、そんな話。


新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

  • 作者:村上 龍
  • 発売日: 2009/04/15
  • メディア: ペーパーバック

作家・村上龍

『限りなく透明に近いブルー』は、村上龍の著作。
村上龍はこの作品でデビューし、群像新人文学賞、そして芥川賞を受賞した。
村上龍は、作家のほかにも、映画監督としての活動もしている。

ちなみに、村上龍は1952年生まれ。
出身は長崎県佐世保市。
血液型はO型。



あらすじ

主人公のリュウは、米軍基地のある町、東京の福生市に住む。
リュウはアルコール中毒者であり、ドラッグ・ジャンキーである。
友人たちも同じくヤバいやつらばかりで、みんなで乱交パーティーやドラッグパーティーなんか平気でやっちゃう。

そんなやつらばかりが登場するから、「清潔」とはかけ離れた生活が描写されていて、たぶん、10ページに1回ぐらいは誰か酔って(もしくはドラッグのせいで)吐いている。
地下鉄の車内でも駅のホームでも、自分の部屋でもお構いなし。あっちこっちで吐いている。あいつら、絶対くさい。そしてその異臭や不快感が隠されることなく描写されている。

物語もあってないようなもので、どこに終着するわけでもなく、カタルシスもイニシエーションもなく、そんな退廃的な世界を延々と見せられる。そんな作品。



文体は清潔である

『限りなく透明に近いブルー』は1976年に発行された作品だから、その時代の若者たちはこんな風に生きていたのかといえば、絶対にそんなことはない。そんなことはないのだが、「これが今の若者の世の中の見え方なんだ」という評価を受けた。

芥川賞選考会ではこの作品について賛否が別れたらしいが、「文体は清潔である」という点では一致したらしい。

正直なところは、私のつたない文章センスでは何が「清潔」なんだかよくわからなかったのだが、巻末に載っていた綿矢りさの解説を読んで、なんとなく言わんとしているところがわかった。(綿矢りさの解説は、講談社文庫の『新装版 限りなく透明に近いブルー』に載っていた。)



    (『新装版 限りなく透明に近いブルー』に載っている綿矢りさの解説から抜粋)
  • 『本作が発表されたとき当時の世間が、これが新しい若者の生態だと騒いだらしいけど、原因はリュウのこの物の見方にあると思う。暴力とドラッグに、まみれた異常な世界を彼は普通の世界のように眺め続ける。』
  • 『ひどい私刑が起こっても、女友達が暴力を振るわれてもリュウは見ているだけ、助けもしない。でも彼は実際は赤ん坊ではなくて目の前で起こっていることを理解しているから、無言のうちに目の前の光景を身体のなかに通し、その度に傷ついている。』


この作品を読んで面白いと思えるためには、1976年当時の時代背景を経験する必要があるんじゃないかな。
私はその経験がないから、面白くなかったんだと思う。


文章はテレパシー

同じく、綿矢りさの解説ではこんなことが書いてあった。



    (『新装版 限りなく透明に近いブルー』に載っている綿矢りさの解説から抜粋)
  • 『スティーヴン・キングは『小説作法』という著書で、“文章とは何か”という問いに“もちろんテレパシーである”と答えている。作家と読者が同じ映像を見ているわけではないのに、文章の力によって、作家と読者が互いの頭のなかにまったく同じ映像を思い浮かべる、その様を“テレパシー”と読んでいるのだ。』


なるほど、私も『限りなく透明に近いブルー』を読んで、強烈な不快感のある映像を思い浮かべた。作者からのテレパシーを受け取ったわけだ。あんまり嬉しいものじゃなかったけど。

すごい作品だったんだなーと、解説を読んで初めて思った。



それはそうと、金原ひとみの『蛇にピアス』の解説を村上龍が書いていた。その中で、こういったことが書いてあった。



    (金原ひとみ『蛇にピアス』に載っている村上龍の解説から抜粋)
  • 『しかし芥川賞という権威の衣をまとうことによって、この小説が持つ毒・魅力は教養というオブラートに包まれることになった。そのことが作品にとって幸福なのか不幸なのか、私にはわからないし、たいして関心はない。ある時代を代表する強烈な作品はそういう運命を辿るのかも知れない。』


『限りなく透明に近いブルー』は、『蛇にピアス』と同様に、毒のある作品である。

蛇にピアス (集英社文庫)

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蹴りたい背中 (河出文庫)

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  • 作者:綿矢りさ
  • 発売日: 2013/10/04
  • メディア: Kindle版